同じ広告を見ても、反応する人としない人がいる。同じメールを配信しても、開封する人と無視する人に分かれる。この差は、商品の良し悪しではなく、受け手の心理状態と段階の違いによるものだ。マーケティング計画を立てるとき、この階層の違いを無視してしまうと、施策の精度は上がらない。
なぜ全員に同じ施策が効かないのか
顧客は均一な集団ではない。ブランドを知らない段階の人と、すでに検討中の人と、過去に購入経験がある人では、求めている情報も反応するメッセージもまったく異なる。
認知の段階にいる人に購入を促しても響かない。検討中の人にブランド紹介をしても、すでに知っている情報の繰り返しになる。顧客がどの段階にいるかを見極め、その段階に合った情報を届ける。当然のことに思えるが、実際のマーケティング計画でこの設計ができている企業は思いのほか少ない。
階層1 まだ課題に気づいていない層へのアプローチ
自社の商品やサービスを必要としているはずなのに、本人がまだその課題を認識していない層がいる。この層に商品の説明をしても意味がない。まず、課題そのものに気づいてもらう必要がある。
有効なのは、課題を言語化するコンテンツだ。「こんなことに困っていませんか」ではなく、具体的な場面を描写する。たとえば飲食店向けのサービスなら「月末に帳簿をまとめるのに毎回3時間かかっている」という状況を示す。読んだ人が「それ、うちもだ」と感じた瞬間に、潜在的な課題が顕在化する。
この段階ではSEOコンテンツやSNSの情報発信が施策の中心になる。商品名やブランド名で検索する段階ではないため、課題に関連するキーワードで接点を作る。
階層2 課題を認識し解決策を探している層へのアプローチ
課題に気づいた顧客は、解決策を探し始める。この段階では複数の選択肢を比較している。自社の商品がその解決策として適していることを、根拠とともに示す必要がある。
比較検討層に対しては、事例の紹介が有効だ。似た業種の企業がどのように課題を解決したか、どのくらいの期間でどのような成果が出たか。抽象的な機能紹介よりも、具体的なストーリーのほうが判断材料になる。
この段階の顧客に向けた施策としては、ホワイトペーパーの提供、ウェビナーの開催、メールマガジンでの段階的な情報提供が機能しやすい。
行動経済学を活用した心理的なアプローチについては、行動経済学マーケティングの記事でも詳しく扱っている。
階層3 購入を迷っている層の背中を押す
解決策として自社の商品を候補に入れてくれている。あと一歩で購入に至るが、何かが引っかかって踏み切れない。この段階の顧客が抱える不安は、「失敗したくない」という心理に集約される。
不安を解消する手段は3つある。
- 無料トライアルやお試しプランの提供で、リスクを下げる
- 導入後のサポート体制を具体的に示す
- 既存顧客の声を、購入の決め手として紹介する
押し売りではなく、不安を取り除く。この姿勢が、購入検討層の信頼を得る鍵になる。
階層4 購入後の顧客をファンに変える
一度購入してくれた顧客に対するアプローチを怠ると、リピートも口コミも生まれない。購入後の満足度を高める施策は、新規獲得のコストを下げることにも直結する。
購入直後のフォローアップメール、使い方のガイド提供、定期的な活用事例の共有。こうした接触が、購入を単発の取引ではなく関係性の始まりに変える。
とりわけ効果が高いのは、顧客の声を積極的に拾い、それを商品改善やコンテンツに反映していると伝えることだ。自分の意見が反映されたという感覚は、ブランドへの愛着を強くする。
マーケティング計画に心理の視点を組み込む方法
消費者心理の階層を意識するだけでは不十分で、それを計画に落とし込む仕組みが要る。具体的には、四半期ごとの計画を立てる際に、各施策がどの階層の顧客に向けたものかを明記する。
全施策を並べたときに、特定の階層に偏っていないかを確認する。認知向けのSEO記事ばかりで、検討層向けの事例コンテンツがない。あるいは既存顧客向けの施策がゼロになっている。こうした偏りに気づけるだけで、計画の質は変わる。
マーケティング計画の具体的な立て方については、マーケティング計画の実践テクニックの記事でも整理している。
顧客を理解することが、施策の精度を決める
施策の数を増やすよりも、今の施策が誰に向けたものかを明確にするほうが、成果につながりやすい。消費者心理の階層を意識した計画は、限られたリソースを最も効果の出る場所に集中させてくれる。
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