AIエージェントのルール設計。任せる仕事と止める仕事の決め方
合同会社Leadfive 山下です。
Leadfiveでは、AIを便利なツールで終わらせず、会社の実務に組み込むAIエージェント運用を発信・支援しています。さて、AIに仕事を任せ始める時に一番怖いのは、便利になることではなく、どこまで任せたのか分からなくなることです。
新人スタッフに初日から金庫の鍵を渡さないように、AIエージェントにも最初に任せる仕事と止める仕事を分けておく必要があります。この記事では、CodexやClaude Codeを会社で使う前に、経営者が作るべき最初のルール表を整理します。

AIエージェントは、新人スタッフとして扱うと事故が減ります
最初から責任者扱いせず、まずは判断の軽い仕事から任せます。
AIエージェントは、指示を理解し、ファイルを読み、下書きを作り、場合によってはコードや記事も編集できます。ここだけ見ると、かなり頼れる存在に見えます。
ただし会社の実務では、作業できることと任せてよいことは別です。新人スタッフが見積書を作れても、価格決定や顧客送信は責任者が確認します。AIも同じで、作業の速さより、止める場所を先に決めることが大事です。
AIエージェントの全体像をまだ整理していない場合は、先にAIエージェントとは何か。中小企業経営者が最初に理解すべきことを読んでください。この記事は、その次に作る運用ルールの話です。
任せてよい仕事は、レジ締め前の集計作業です
売上の最終確定ではなく、確認前の集計や下書きから任せます。
AIに最初に任せやすいのは、やり直せる仕事です。たとえば記事の構成案、メールのたたき台、議事録の整理、公開前チェック、テスト結果の要約、社内向けの作業メモです。
これらは、多少ズレても人が直せます。AIが作ったものをそのまま外に出さず、責任者が確認してから使うため、導入初期の練習に向いています。
目安は次の3つです。
- 外部に送信されない
- お金や契約が動かない
- 間違っても人が見て戻せる
Codexを使う場合も、最初はローカルの下書き、テスト、レビュー、差分確認から始めるのが現実的です。基本設定の考え方はCodexの始め方。中小企業経営者が最初に設定する5項目で整理しています。
止める仕事は、金庫の鍵を渡す前に一覧化します
公開、送信、お金、顧客情報、本番変更は人の確認で止めます。
AIに任せる範囲を決める時は、何を任せるかより先に、何を任せないかを書きます。ここが曖昧だと、便利さに引っ張られて確認が後回しになります。
中小企業で最初に止めるべき仕事は、次のようなものです。
- 顧客へのメール送信、LINE配信、SNS投稿
- 記事公開、予約投稿、本番サイト反映
- 広告予算、価格、契約条件の変更
- DB、環境変数、APIキー、秘密情報の操作
- 顧客名、個人情報、未公開の売上数字を外部AIへ渡すこと
これはAIを信用しないという話ではありません。会社の責任者確認を仕組みにする話です。スマホから承認する場合でも、承認してよい仕事と承認しない仕事を分けておきます。外出先での確認設計はCodex Remoteとは何か。スマホでAI作業を承認する方法が近い内容です。

AGENTS.mdは、入社初日の業務マニュアルです
毎回口で説明する代わりに、AIへ先に読ませるルールを書きます。
AIエージェントに毎回同じ注意をするのは、社長が新人スタッフへ毎朝同じ禁止事項を説明している状態です。そこで使うのが、AGENTS.mdのようなプロジェクトルールです。
AGENTS.mdには、次のような内容を書きます。
- この会社で最優先すること
- 触ってよいファイルと触らないファイル
- 公開、投稿、顧客送信の停止条件
- 秘密情報を扱う時の禁止事項
- 変更後に確認するテストや表示確認
AGENTS.mdの考え方は、AGENTS.mdとは何か。AIに渡す会社の業務マニュアルで詳しく整理しています。ルール設計の記事では、その中でも承認境界に絞って考えます。
Skillは手順書、Memoryは引き継ぎノートとして分けます
手順と記憶を混ぜないことで、AIの運用が管理しやすくなります。
AIに仕事を任せる時、よく混ざるのがSkillとMemoryです。Skillは繰り返し作業の手順書です。たとえば公開前レビューの順番、画像チェックの項目、記事下書きの型などです。
Memoryは引き継ぎノートです。会社の判断軸、よく使う呼び方、繰り返し注意されたことなどを残します。ただし、顧客情報、秘密情報、APIキーのようなものは残しません。
手順はSkillへ、判断の背景はMemoryへ、禁止事項はAGENTS.mdへ。こう分けると、AIに任せる範囲が見えやすくなります。Skillの基本はAIエージェントのSkillとは何か。手順書で仕事を任せる方法、Memoryの線引きは公開候補の ai-agent-memory-rules で整理しています。

最初のルール表は、6行だけで始めます
大きな規程ではなく、今日から使う停止条件を短く作ります。
最初から立派なAI利用規程を作る必要はありません。1人会社や小規模事業では、まず6行のルール表で十分です。
AIに任せてよい仕事
1. 社内メモ、記事、メールの下書き作成
2. 公開前チェック、誤字確認、改善案の作成
3. テスト、表示確認、差分の要約
人が確認してから進める仕事
1. 顧客送信、SNS投稿、記事公開
2. 価格、契約、広告、本番設定の変更
3. 秘密情報、顧客情報、DB、環境変数に関わる操作
この6行をAGENTS.mdや社内メモに入れ、AIへ最初に読ませます。迷った時は止める側に倒す。慣れてきたら、業務ごとにもう少し細かく分ければ十分です。
そのまま使えるルール作成プロンプト
自社の業務に合わせて、任せる範囲と止める範囲をAIに整理させます。
以下をそのまま使ってください。
あなたは当社のAIエージェント運用担当です。
次の業務一覧を、AIに任せてよい仕事、人が確認してから進める仕事、AIに任せない仕事の3つに分けてください。
前提:
- 顧客送信、SNS投稿、記事公開、広告、価格、契約、本番反映、DB、環境変数、秘密情報は人の確認で止める
- 最初はやり直せる下書き、確認、要約、テストから任せる
- 中小企業の実務で使うため、専門用語ではなく業務場面で説明する
業務一覧:
1. ここに自社の業務を書く
2. ここに自社の業務を書く
3. ここに自社の業務を書く
出力:
- 3分類の表
- 止める理由
- 最初の1週間で試す仕事
- AGENTS.mdに入れる短いルール文
AIエージェントのルール設計は、AI活用のブレーキではありません。新人スタッフに業務マニュアルと責任者確認を渡すのと同じで、仕事を任せるための前提です。
まずは、AIに任せる仕事を3つ、人が止める仕事を3つ書き出してください。そこまで決まると、CodexやClaude Codeを便利なツールではなく、会社の実務を支えるスタッフとして扱いやすくなります。
出典
- OpenAI Codex: https://developers.openai.com/codex/
- OpenAI Codex changelog: https://developers.openai.com/codex/changelog/
- Claude Code docs: https://docs.anthropic.com/en/docs/claude-code
- GitHub protected branches docs: https://docs.github.com/en/repositories/configuring-branches-and-merges-in-your-repository/managing-protected-branches
このシリーズの順番
公開、送信、広告、契約、本番変更を人が止めるルールを作れる。次の作業は、AIに任せる仕事を3つ、人が止める仕事を3つ書き出すことです。